日本の喫煙率は若干低下傾向にあるものの先進国の中では高い状況となっています。喫煙に伴う健康被害は国民的問題です。分煙も進んできており禁煙に対する意識は日に日に高まってきています。今回は、喫煙とこれに由来する健康被害、そして禁煙の必要性について紹介します。
喫煙が体に悪いのはなぜ?
喫煙とはタバコを吸うことです。
このタバコにはニコチンをはじめとする様々な有害物質が含まれており、その数は約200種類とも言われています。
“タバコと健康”の関係についてご紹介しましょう。
脂質異常症と喫煙の関係
タバコを吸うと体の中の中性脂肪の元となる遊離脂肪酸と言われる油が増えます。
遊離脂肪酸が増えると体が普段働いている脂質代謝が乱れてしまい、油を適切に処理することが出来なくなってしまいます。
この遊離脂肪酸は、血をドロドロにさせてしまう作用があり、プラークと呼ばれる油の塊が血管にできてしまいます。
このプラークが破れてしまうと血の塊(血栓)が生じ、血栓が詰まってしまうと動脈硬化や脳梗塞を進行させる危険な要因となります。
糖尿病と喫煙の関係
タバコを吸うことで交感神経が興奮します。
交感神経が刺激されるとヒトは元気な方向に傾きますが、元気な状態をずっと保つことは体に負担がかかるので、普段は副交感神経が遅れて働くことでそのバランスをとっています。
しかし、タバコにより強制的に刺激された交感神経は、血糖値を以上に増加させ、併せて血糖値を下げるインスリンの作用を抑えてしまいます。
そのため、血糖値のバランスが取れなくなり、糖尿病になりやすくなってしまいます。
喫煙が与えるその他の病気
タバコの影響は脂質異常症や糖尿病だけにとどまりません。
そのほかにも以下のような病気に進展する可能性があります。
生活習慣病と深い関係の深いメタボリックシンドロームの助長
・胃がん、咽頭がん、食道がんなどの癌の発現リスク増加
・妊娠・出産への悪影響
このようにタバコが与える影響は様々あります。
『本数が少ないから大丈夫』と言っている人を良く見かけますが、タバコを5本吸う人と20本以上吸う人ではその発がん性や慢性疾患にかかるリスクは変わらないといった研究報告もあるので注意が必要です。
タバコのどの成分が体に悪いのか
冒頭でも示しましたが、タバコの中には多くの有害物質が含まれています。
この中で、生活習慣病と関連が深い成分についてごしょうかいします。
ニコチン
タバコの有害物質としては一番知られているでしょう。
ニコチンには、次のような作用があることがわかっています。
・高い依存性(麻薬と同等かそれ以上)
・強力な血管収縮作用(血圧を上げる・血流を妨げる)
・遊離脂肪酸の増加
一酸化炭素
体内の酸素はヘモグロビンによって全身に運ばれています。
一酸化炭素はこのヘモグロビンに結合する力が酸素の200倍ともいわれており、容易に全身を酸欠状態にします。
この酸欠状態が続くと、血液の粘土があがり一般的に言われるドロドロ血と言われ、血栓ができやすい状態になってしまいます。
また、一酸化炭素は活性酸素と呼ばれる体を攻撃する物質に分解されやすく、この活性酸素が血管を攻撃することで血管が脆くなってしまいます。
この血栓と血管が脆くなる作用が合わさることで脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めてしまいます。
禁煙はどうやってすればいい?
喫煙者はいつでも“禁煙”の言葉に頭を悩まされるでしょう。
もしくは、『今更遅い』と半ば諦めている人も多いのではないでしょうか。
しかし、喫煙により血管収縮作用や血管を攻撃する効果は速やかになくなることがわかっています。
喫煙による悪影響がなくなることはありませんが、禁煙をすることでその日から体に与える悪影響を限りなくゼロにすることが出来るのです。
禁煙には明確な目標設定が必要とされています。
・健康のため
・節約(1日1箱で年間15万円以上)
・子供の誤飲防止
これは、ニコチンの依存性に勝つためです。
麻薬と同等の依存性を持つニコチンは辞める時の離脱症状が禁煙の天敵となります。
これに打ち勝つためには自身の意思が必要不可欠です。
しかし、禁煙を希望してもできない人もいます。
ニコチンのドパミン(快楽を感じるホルモン)遊離作用は強力です。
そのため、ニコチンを絶つとドパミンが相対的に減ってしまうため、イライラしたりします。
これには、『ニコチン置換療法』が効果的です。
ニコチン効果療法は、“ニコチン依存を段階的に改善しながら禁煙に導く補助的な治療法”とされています。
ニコチン摂取量を徐々に減らすことでニコチン摂取量をゼロにすることが期待できます。
ニコチン療法は、薬局などで購入できるニコチンガムと、処方箋が必要なニコチンパッチがあります。
双方メリット・デメリットがあるので、自分の意思だけで禁煙が難しい場合は一度、病院や薬局などの医療機関へ受診することをお勧めします。
【まとめ】
喫煙は200種類以上ある有害物質の中でもニコチンと一酸化炭素が体に悪影響を与えます。これによる健康被害は、脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞、がんなどの病気に発展する可能性を秘めています。あたなの健康を守るために断固たる決意をもって禁煙に臨みましょう。一人だけではどうにもならないときは、医療機関を受診してみてください。きっとあなたの手助けをしてくれるはずです。
この記事へのコメントはありません。